風力発電向け独自過充電防止回路の目的
風力発電機に付属のチャージコントローラでは、電力的に赤字となってしまったため、
独自の過充電防止回路を検討しました。
独自過充電防止回路の回路図・技術概要
当方で、以前から検討していた過充電防止回路の基本判定回路は、Fig.1のようなものです。
直列接続された複数のLEDは、両端の電圧に対し、電流が指数関数的に増加します。
その電流を、バイポーラトランジスタで増幅コピーし、抵抗器で受け、電圧に変換します。
Fig.1
これに、過充電判定電圧調整機能を付けたものが、Fig.2の回路になります。
SW1~4を切り替えることにより、電流が流れる経路上のLEDの数と種類を調整できるようになっています。
例えば、SW1~4がすべてオンで、電流は、LED09~14のみに流れ、
過充電判定電圧は、青色LED6つ分になります。
SW1~3がオン、SW4がオフで、電流は、LED08、LED09~14に流れ、
過充電判定電圧は、青色LED6つ分プラス赤色LED1つ分になります。
例えば、SW1~4がすべてオフで、電流は、LED01~14のすべてに流れ、
過充電判定電圧は、青色LED13個分プラス赤色LED1つ分になります。
SW5,6を切り替えることにより、バイポーラトランジスタで増幅コピーし受ける抵抗器の抵抗値を調査できます。
例えば、SW5,6が両方ともオフで、抵抗器の合成抵抗は、抵抗器R1、抵抗器R2、抵抗器R3の合計抵抗値となります。
Fig.2
さらに、増幅段、電力捨て用FET、冷却機構(ファン制御回路、冷却ファン)を付け、Fig.3のようになりました。
増幅段は、pMOSFET(Q2)と抵抗器(R4)により、貫通電流を流さずに電圧を増幅します。
電力捨て用FET(p4)は、入力がHのときにバッテリーの両端を短絡し、大電流を流し、
バッテリーの両端の電圧が一定値以上にならないようにします。
入力がLのときは、電流を流しません。
ファン制御回路は、nMOSFETと3端子レギュレータにより構成され、
入力がHの場合、3端子レギュレータのVSS、OUT間に12Vを出力し、
入力がLの場合、3端子レギュレータのVSS、OUT間は0Vになります。
3端子レギュレータのVSS、OUT間が12Vの場合、電力捨て用FET(p4)を冷却します。
以上の回路・装置により、バッテリーの両端の電圧が一定値以上の場合のみ、
電力捨て用FET(p4)が大量の電流を捨て、電力捨て用FET(p4)を冷却ファンが冷却します。
こうすることにより、バッテリーの両端の電圧を一定値以上にしないように制御します。
Fig.3
独自過充電防止回路のプリント基板
この回路のプリント基板を作ることにしました。
フリーソフトPCBEで、自分でパターンを描きました。
できたプリント配線板は、Fig.4のとおりです。
18cm x 18cmの大きさで、70um厚の銅箔を持ち、ROHS対応です。
Fig.4
独自過充電防止回路の電気特性
このプリント配線板の電圧電流特性を評価しました。
結果の例は、Fig.5の通りです。
バッテリー両端の電圧があるところでバッテリー両端を短絡する電流が急峻に変化しています。
このバッテリー両端の電圧を、過充電判定電圧と呼ぶことにします。
過充電判定電圧より十分低い、バッテリー両端の電圧が13.93Vにおいて、
バッテリー両端を短絡する電流はわずか2uAした。
この電流をこの過充電防止回路の自己消費電流と定義すると、
自己消費電流は、風力発電機付属チャージコントローラに比べ、15,000分の1となりました。
スイッチ依存性に関し評価したのが、Fig.6になります。
Fig.2におけるSW1~SW6までをオンオフさせ、過充電判定電圧を測定しました。
過充電判定電圧はこの例では12Vから30Vまでの広範囲を調整できています。
そのため、LEDの閾値がばらついても、過充電判定電圧を適切な値に調整できています。
Fig.5
Fig.6
独自過充電防止回路の特許
以上の過充電防止回路を特許として出願しました。
審査請求、中間処理ののち、出願から1年後に無事に登録されました。
登録番号は、「特許第6114898号」です。
特許が成立したので、本技術を商用利用する際は、当方とライセンス契約する必要があります。
ベランダでの風力発電システム実験
次に、風力発電機に接続して、実システムで実験をしました。
接続図を、Fig.7に示します。
風力発電機には、ナイフスイッチ、接続端子、ヒューズ、シャント抵抗器、アナログ電流計を介して付属チャージコントローラまたは試作過充電防止回路を接続します。
そして、シャント抵抗器、アナログ電流計、ヒューズを介してバッテリーを接続します。
風力発電機側、バッテリー側の電圧および電流は、データロガーでモニタできるようにしました。
付属チャージコントローラ、試作過充電防止回路それぞれの場合に、システムに接続し、バッテリー両端の電圧をモニタした結果を、Fig.8に示します。
付属チャージコントローラを用いた場合、約40日経過後にバッテリー電圧が12.0Vとなり実験中止となったのに対し、当方試作過充電防止回路を用いた場合は、60日経過後も満充電を維持しました。
この理由は、主として電流の違いによるものだと考えられます。
付属チャージコントローラの自己消費電流は30mAで、当方試作過充電防止回路の自己消費電流は2uAで、約15,000倍の違いがあります。
ただし、当方は、システムを1機しか保有しておらず、同一の風況で比較したものではないことをお断りしておきます。
参考までに、付属チャージコントローラ、試作過充電防止回路それぞれの場合に、発電電流、充電電流のヒストグラムをTable.1に示します。
この電流は、データロガーで10秒ごとの値を取得したものになります。
Fig.7
Fig.8
Table.1
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