独立電源システムの問題
独立電源システムは、1kW以下の小規模なシステムに適します。
しかし、独立電源システムで用いられるチャージコントローラには、
自分自身で電流を消費してしまう自己消費電流があります。
この自己消費電流は、太陽電池からの発電電流が
100W以上向けの比較的大規模なもので数十mA程度となります。
また、太陽電池からの発電電流が
100W以下向けの比較的小規模なもので数mA程度のものが多いです。
例えば、チャージコントローラが、充電時8mA、非充電時2mAの電流を消費するとします。
ここで、1日に8時間発電し、発電時の平均発電電流が20mAとした場合、
1日の発電電流総量は160mAhとなります。
しかし、このうち96mAh(ミリアンペア・アワー)は充放電コントローラ自身によって消費されてしまいます。
蓄電池が1日に20mAhの電流を自己放電してしまうと仮定すると、
1日当たり44mAhしか利用できないことになります。
このように、小規模の独立電源システムでは、
充放電コントローラにて消費される電流が無視できません。
当方で開発した第1世代過充電防止回路の紹介
当方では、この度、非切断時自己消費電流2-10uA(マイクロアンペア)の過充電防止回路を
開発いたしました。
過放電防止機能もつけることが技術的には可能ですが、
自己消費電流が数十uAとなってしまうため、つけませんでした。
しかも、満充電により太陽電池と蓄電池が切断された場合、
7つの発光ダイオードが明るく点灯してお知らせします。
切断時は、発光ダイオードの点灯のため、10mA程度の自己消費電流を消費しますが、
太陽電池と蓄電池が切断され、
使い道のなくなった電流が消費されているに過ぎないので、
実質的な消費電流とみなす必要はございません。
充電電流と充電する蓄電池の最大電圧の関係の実測例は以下のとおりです。
充電電流 (A) |
充電する蓄電池の最大電圧 (V) |
0.27 |
13.3 |
0.60 |
13.3 |
1.31 |
13.2 |
2.15 |
13.1 |
2.58 |
13.0 |
主な仕様は以下のとおりです。
システムの電圧 |
12 V |
最大充電電流 |
2.5 A |
太陽電池の最大接続量 |
40 W |
自己消費電流(常温typical) |
3 uA |
切断電圧 |
13.0 - 13.3 V |
当方で開発した第1世代過充電防止回路の技術概要
図1を参照してください。
この回路は、発電系のプラスマイナス端子間の電圧により
ダイオード群を含む回路部位111に流れる電流が決まります。
ダイオード群を含む回路部位111に流れる電流は、電流が流れ始める電圧付近において、
両端にかかる電圧に対して指数関数的に増大します。
そして、ダイオード群を含む回路部位111に流れる電流を、
PNP型バイポーラトランジスタ114で増幅およびコピーし、
抵抗器113に流して受けることにより、
ダイオード群を含む回路部位111に流れる電流に比例した電圧を抵抗器113の両端に作り出します。
その電圧により決まるノード116の電位によりPMOSトランジスタ115-2が制御されるので、
ダイオード群を含む回路部位111に流れる電流が多くなるほど
PMOSトランジスタ115-2はソースドレイン間の抵抗を上げることになります。
発電系のプラスマイナス端子間の電圧が一定電圧値を超えると
ダイオード群を含む回路部位111に流れる電流が一定値を超え、
ノード116の電位が一定値を超え、
PMOSトランジスタ115はソースドレイン間の抵抗が一定値を超えます。
発電系のプラスおよびマイナスの端子に太陽電池接続した場合などは、
このとき、発電系のプラスマイナス端子間の電圧がまずます上昇し、
PMOSトランジスタ115-2はソースドレイン間の抵抗がますます上昇するという正帰還がかかります。
そのため、発電系のプラスマイナス端子間の電圧は一気に上昇し、
PMOSトランジスタ115-2は完全にオフになります。
こうなることにより、発電系のプラスマイナス端子間の電圧が
一定電圧値を超えるとPMOSトランジスタ115-2がオフし、
発電系を蓄電系と切り離すことにより、
蓄電系のプラスマイナス端子間の電圧を一定電圧値以上に上げない機能が実現します。
低価格かつ低消費電流となる本質的理由は、
ダイオードは電流が流れ始める付近の両端の電圧において、
両端にかかる電圧に対して指数関数的に電流量が増大することを用いているため、複雑な増幅回路が不要で、
また、直列接続されるダイオードの個数や各ダイオードの閾値によりダイオードに流れる電流を調整し、
少なく抑えることができることによります。
尚、発電系(太陽電池)と蓄電系(蓄電池)を切り離すかどうかを決める一定電圧値は、
直列接続されるダイオードの個数や各ダイオードの閾値により調整することができます。
図1
自動車用バッテリー上がり防止システムの提案
自動車に搭載された鉛蓄電池に10W~20W程度の太陽電池、逆電流防止ダイオード、アナログ電流計に、
開発した第1世代過充電防止回路を組み合わせて、
図のような長時間自動車に乗らない場合に自動車のバッテリーがあがってしまうことを
防止するシステムを提案いたします。
図2
当方で開発中の第2世代過充電防止回路の紹介
しかし、第1世代過充電防止回路にも欠点があります。
それは、一度過充電と判定されると、自発的に発電側の電圧が下がるまで、充電をしません。
また、過充電判定電圧は大きな電流依存性を持ちます。
当方では、このような問題を解決した第2世代過充電防止回路を開発いたしました。
第2世代過充電防止回路は、シミュレーション上では
第2世代過充電防止回路は、シミュレーション上では10uA(マイクロアンペア)程度の消費電流で、
一度過充電と判定され、発電側と蓄電側が切断されても蓄電側の電圧が下がると再び充電し、
過充電判定電圧は、蓄電池の内部抵抗を無視すると、電流依存性を持ちません。
当方で開発中の第2世代過充電防止回路の技術概要
図3、図4を参照してください。
図3のように、発電側と蓄電側の間に設置された過充電防止回路において、
第一の基本判定回路と第二の基本判定回路とフリップフロップとして機能する回路を用います。
第一の基本判定回路、第二の基本判定回路の動作に関しては、第1世代基本判定回路の説明をご参照ください。
ここで、第1の基本判定回路、第2の基本判定回路は発電側ではなく蓄電側に接続します。
フリップフロップとして機能する回路は発電側に接続します。
こうすることにより、過充電判定電圧にヒステリシスを持たせて切断、再接続を行うことができます。
蓄電側の電圧が小さい場合、第一の基本判定回路は電位H(ハイ)を、第二の基本判定回路は電位L(ロー)を出力します。
蓄電側の電圧が大きい場合、第一の基本判定回路は電位L(ロー)を、第二の基本判定回路は電位H(ハイ)を出力します。
蓄電側の電圧が中程度の場合、第一の基本判定回路、第二の基本判定回路は、中程度の電位を出力します。
その結果はフリップフロップとして機能する回路に入力し処理され、
過充電がヒステリシスを持った過充電判定電圧により判定されます。
前項目で書いたような特性が実現する本質的な理由は、
フリップフロップとして機能する回路一つが、以下に示すような機能を同時に有するためです。
1.増幅機能
2.ヒステリシス機能
3.レベル・シフティング機能
図4
当方で開発中の風力発電向け過充電防止回路の紹介
第1世代過充電防止回路、第2世代過充電防止回路は、太陽光発電向けであり、風力発電に用いることはできません。
理由は、風力発電機を接続した場合、満充電となった場合に風力発電機と蓄電池を切り離すだけだと、
風力発電機で発電した電力が行き場を失い、風力発電機両端の電圧が異常に高くなります。
そのため、風力発電機で発電した電力を捨てる回路が必要になります。
このような回路を転換負荷回路と呼びます。
当方で開発中の風力発電向け過充電防止回路は、
第1世代過充電防止回路と同じ過充電基本判定回路をベースに、
転換負荷回路、冷却機構を備えることにより、
風力発電、太陽光と風力のハイブリッド発電に対応します。
当方で開発中の風力発電向け過充電防止回路の技術概要
今回試作した風力発電向け過充電防止回路の回路図を図5に示します。
一番左の破線部分が過充電基本判定回路、その右が増幅段、その右がファン制御回路です。
過充電基本判定回路は、蓄電池のプラス側とマイナス側間の電圧が一定値を超えると、LED01~14に電流を流し、
その電流がバイポーラトランジスタQ1により増幅コピーされ、抵抗器R1~3で受けることにより、電圧に変換されます。
こうして蓄電池のプラス側とマイナス側間の電圧が一定値を超えると、抵抗器R1~3に大きな電圧を発生させます。
増幅段は、PMOSFETと抵抗器により、貫通電流を流さずに増幅します。
増幅結果により、メインスイッチであるNMOSFET、Q4を制御します。
これにより、蓄電池のプラス側とマイナス側間の電圧が一定値を超えると、
Q4に大電流が流れ、蓄電池のプラス側とマイナス側間の電圧が一定値を超えないように制御します。
ファン制御回路は、増幅段までの増幅結果によりNMOSFET、Q3が制御され、Q3がオンの場合3端子レギュ
レータがVSS、OUT間に12Vを出力し、冷却用ファンを回転させます。
Q3がオフの場合は、3端子レギュレータは、VSS、OUT間に0Vを出力し、冷却用ファンを回転させます。
これにより、Q4に電流が流れる、増幅段までの増幅結果がハイの場合のみQ4を冷却します。
蓄電池のプラス側とマイナス側間の電圧が例えば14.08V付近で、Q4を流れる電流が急峻に立ち上がります。
この回路は、LED01~14の閾値のばらつきの影響を受けやすいという問題がありますが、
スイッチ群により、過電圧判定電圧調整可能にすることにより解決します。
この回路は、消費電流が市販チャージコントローラの15,000分の1程度の2uAと非常に小さいです。
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