ベランダ風力発電システムの構築の目的
所沢市に引っ越してきて、現在住んでいるアパートが日当たりが悪い一方でビル風が吹き抜けます。
そのため、風力発電システムを構築しようと考えるようになりました。
同様な環境のアパート・マンションにお住まいの方も多数いらっしゃると思いますので、
参考になればと思います。
目的は、以下の通りです。
1.停電・災害時の非常電源の確保。
2.ベランダ風力発電における風力発電機、バッテリーの電圧、発電電流、充電電流のモニタ。
3.風力発電向け過充電防止回路の検討。
装置の選定
機器名 |
種類 |
モデル |
仕様 |
風力発電機 |
直流出力 |
WG504 |
10m/sで25W |
ブレーキスイッチ |
|
WG504-BR |
|
電流計 |
アナログ電流計 |
- |
最大目盛3A |
蓄電池 |
多機能鉛蓄電池 |
パワーコンボ PG-421SP |
21Ah |
蓄電池 |
鉛蓄電池 |
12DD-33 |
33Ah |
風力発電機と風力発電機用ブレーキスイッチは今回10万8000円で購入しました。
英国製で、風速10m/sで25W発電します。
耐風速は40m/sなので、よっぽどのことがない限り取り外す必要はなさそうです。
それ以外の装置は、太陽電池の独立電源システムのときに使用していたものです。
購入した風力発電機の内容物は、この写真の通りです。
所沢の風況
2014年、
2015年
の埼玉県所沢市の平均風速他の情報、
本日の風速他
の情報が、気象庁から公開されています。
風力発電機の固定
まず、支柱を購入します。
内径31.7mmの支柱を用意する必要があるのですが、
外径34mmの支柱を購入してきたところ、風力発電機が入りませんでした。
外径38mmの支柱を購入してきたところ、ぴったり入りました。
長さは143cmで、材質は鉄の亜鉛メッキです。
次に、風力発電機を支柱に固定するため、
上から40mmの場所の相対する反対側の2か所に、支柱に8.5mmの穴を開けます。
東芝製の金属用のドリルで穴を開けますが、これが大変でした。
まず4mmの刃で穴をあけ、次に6mmの刃で穴をあけ、最後に8.5mmの刃で穴をあけます。
また、配線を出すための6mmの穴もあけます。
その次に、延長配線を穴から入れて上部から取り出し、ハンダで接続します。
風力発電機に支柱をボルトで取り付け、尾翼とノーズコーンを取りつけます。
(この写真は、尾翼の上下の向きが間違っていて、後日取り付けなおしました。)

さて、次に風力発電機付きの支柱をベランダに取り付けます。
このように上下2か所を金具で固定しました。

取り付けられた風力発電機は、このようになりました。
電気配線と風力発電システムの運用
そして、エアコンのダクトの上の部分に穴をあけ、チャージコントローラやバッテリーなどを屋内に置くために、
ベランダと屋内を接続するための穴を開けます。
ベランダと屋内を10mの配線で接続し、屋内のチャージコントローラやバッテリーとの配線をします。
アナログ電流計を発電電流、充電電流用の2か所、50mΩのシャント抵抗器を同じく発電電流用、充電電流用の2か所、ヒューズを2か所に挿入します。
配線の回路図と、写真はこのようになりました。

実際に運用を開始しました。
右側の電流計が、-30mA程度になっていたことから、バッテリーとチャージコントローラは接続されていることが確認されました。
ただ、チャージコントローラが30mAも電流を消費しては、電力収支が厳しいものになることが予想されます。
チャージコントローラの設定で負荷側を短絡すると、風力発電機が回ったときに、左側の電流計が0.2A程度まで触れました。
このことから、風力発電機とチャージコントローラも接続されていることが確認されました。
しかし、チャージコントローラの設定で負荷側を短絡しない充電モードにすると、まったく充電しません。
そのため、直流電源で充電してみることにしました。
写真は、電圧13.1V、電流0.10Aで充電している様子です。
充電できていることがわかります。
そのため、風力発電機で充電できないのは、単純に風が弱いからということがわかりました。

作業中にヒューズをかなりの数飛ばしてしまいました。
2015/2/11 14:00頃、発電、充電が確認されましたので、そのときの計器の写真を載せます。

2015/2/15 19:00頃、はじめて3Aレンジのアナログ電流計が振り切れるほどの発電が確認されましたので、そのときの計器の写真を載せます。
風力発電モニタリングシステムの構築とシステムの整理
図のように風力発電モニタリングシステムを構築しました。
2つのチャネル間絶縁された電圧データロガー1、2で、発電電圧、バッテリー電圧、発電電流、充電電流をモニタします。
また、余っている電圧データロガー3で、バッテリー電圧をモニタします。
さらに、温度と湿度もデータロガー4でモニタします。
電圧データロガー1、2は1秒間隔でサンプリングして10回分を平均することにより、10秒に1回記録します。
他のデータロガーは10分に1回記録します。
データロガー1、2は24万回、他のデータロガーは8000回記録できます。
すべてのデータロガーは、USB-HUB経由でパソコンに接続した状態にし、いつでもデータを吸い上げられるようにしておきます。
USB-HUBはセルフパワーで、商用電源に接続された電源タップに接続し、データロガー1、2に電力を供給します。
他のデータロガーは、電池駆動です。

そして、各装置、配線がごちゃごちゃしてきたので、テーブルを使って整理しました。
テーブルの下にバッテリー、それ以外は、テーブルの上に置きました。
また、抵抗器にヒートシンクを取りつけました。
風力発電システムのモニタリング結果
2015.3/13取得結果

最初のデータロガーの出力が出ました。
◎データの加工の仕方
10秒に1回記録した生データそのままだと、12日分で10万ポイントほどになり、
そのままではEXCELのグラフにできなくなります。
そこで、電圧の情報は、12ポイントを平均して1ポイントにしました。
電流の情報は発電機側で20mA、蓄電池側で4mA変化した場合のみ残すことにしました。
◎結果に関して
蓄電池側の電圧が大きく変化している箇所がるのですが、
これは、バッテリーのうち容量21Ahのもの(商品名パワーコンボ)の主電源を入れたときの変化です。
このバッテリーの主電源が入っていないと充電されないのかがいまいちわからないため、
主電源をいじったりしたことによるものです。
接触の問題でこのバッテリーが接続されたり切断されたりといったことも起こっていそうです。
いずれにせよ今回のデータはあまり良いデータではありません。
2015.3/23取得結果

2回目のデータロガーの出力が出ました。
バッテリーの主電源等を触らずにはじめて10日分のデータを取ることができました。
発電機電圧、蓄電池電圧、発電機電流、蓄電池電流が正しくモニタできていることがわかります。
また、このシステムは電力的に赤字であることがわかります。
2015.5/7取得結果

図1(3/23-4/10)

図2(4/10-4/28)

図3(4/28-5/7)
2015.5/7に外部強制充電が必要になるまでに取得したデータをまとめました。
図1、図2、図3は、それぞれ、2015.3/23-4/10、4/10-4/28、4/28-5/7の結果です。
上が発電機電圧、蓄電池電圧、下が発電機電流、蓄電池電流です。
この間、外部強制充電なしで45日間通しのデータがとれました。
今回は、春一番など強い風が何度も吹いたため、これだけの長い期間持ちました。
下に、それぞれの期間の累積発電電流、累積消費電流、収支1、収支2、蓄電池電圧をまとめました。
期間 |
累積発電電流 |
累積消費電流 |
収支1 |
収支2 |
蓄電池自己消費 |
蓄電池電圧 |
|
( Ah ) |
( Ah ) |
( Ah ) |
( Ah ) |
( Ah ) |
( V ) |
2015.3/23-4/10 |
7.4 |
13.0 |
-5.5 |
-7.2 |
3.9 |
12.43 |
2015.4/10-4/28 |
10.4 |
13.0 |
-2.6 |
-2.9 |
3.9 |
12.20 |
2015.4/28-5/7 |
4.7 |
6.5 |
-1.8 |
-1.8 |
1.9 |
12.04 |
累計 |
22.5 |
32.4 |
-9.9 |
-11.9 |
9.7 |
|
累積発電電流は、発電機電流の累積です。
累積消費電流は、チャージコントローラの自己消費電流30mAに時間をかけて算出しました。
収支1は、上記の差です。
収支2は、蓄電池電流の累積です。
収支1と収支2の差は、発電することにより蓄電池電圧が上がり一定値以上に高くなると、
一部の電流を捨てることによる差です。
画像1の下の図の左の方で、2015/5/24日などで、青い線と赤い線の差が大きいのがこの差分です。
さて、では蓄電池にはどれだけの使える容量があるのか考えてみました。
仕様では、33Ah+21Ahで54Ahです。
33Ahの方は古いので、へたっていてもっと容量が減っていると考えられます。
現在では合計で30Ahであると仮定します。
そして12.04Vで実験終了としているので、これ(13Vから12.04Vまで)が全体の70%であると仮定します。
そうすると、21Ah使えることになります。
収支2は、-11.9Aなので、9Ahほどどこかへ行ってしまった計算になります。
蓄電池には自己消費電流があるので、一日当たり仕様の容量の0.4%が自己放電してしまうと仮定します。
そうすると、累計で9.7Ahのマイナスとなります。
いたるところで仮定をしましたが、この過程が正しければつじつまがあうことになります。
これ以外にも、蓄電池のうち一つがパワーコンボという多機能電源で、
この多機能電源の機能が電流を消費している可能性があります。
蓄電池の自己放電は、温度にもよりますが、高性能のものでは一日に容量の0.1%しか自己放電しないらしいです。
ここまで検討したので、最後にこのシステムでは、チャージコントローラの自己消費電流がいくら以下なら
赤字にならないのか考えてみようと思います。
累積発電電流ー蓄電池自己消費(電流)は12.7Ahです。
12.7Ahを評価期間(45日x24h)で割ると12mAと出ます。
チャージコントローラ、過充電防止回路の消費電流は12mA以下である必要がありそうです。
ただし、蓄電池電圧が一定値以上になって電流の一部が捨てられることがあることを考慮する必要があります。
また、今回はかなり風況がよかったという点も考慮する必要があります。
チャージコントローラの消費電流は、5mA以下に抑えたいです。
さて、発電電流、充電電流のヒストグラムを作りました。
1カウントは、1秒間隔で10回計測した平均である10秒に1回のデータです。
電流 (A) |
発電 |
充電 |
-0.1~0.0 |
328,802 |
361,701 |
0.0~0.1 |
39,268 |
11,452 |
0.1~0.2 |
7,314 |
5,396 |
0.2~0.3 |
4,571 |
3,335 |
0.3~0.4 |
2,840 |
2,145 |
0.4~0.5 |
1,879 |
1,388 |
0.5~0.6 |
1,234 |
1,027 |
0.6~0.7 |
862 |
721 |
0.7~0.8 |
604 |
494 |
0.8~0.9 |
429 |
350 |
0.9~1.0 |
305 |
258 |
1.0~1.1 |
251 |
193 |
1.1~1.2 |
147 |
114 |
1.2~1.3 |
99 |
86 |
1.3~1.4 |
82 |
80 |
1.4~1.5 |
74 |
67 |
1.5~1.6 |
52 |
37 |
1.6~1.7 |
33 |
30 |
1.7~1.8 |
31 |
20 |
1.8~1.9 |
20 |
23 |
1.9~2.0 |
22 |
9 |
2.0~2.1 |
7 |
15 |
2.1~2.2 |
10 |
5 |
2.2~2.3 |
9 |
7 |
2.3~2.4 |
8 |
3 |
2.4~2.5 |
1 |
1 |
2.5~2.6 |
4 |
4 |
2.6~2.7 |
2 |
1 |
2.7~2.8 |
2 |
1 |
2.8~2.9 |
1 |
0 |
2.9~3.0 |
0 |
1 |
3.0~3.1 |
1 |
0 |
2015.6/14取得結果

上(5/7-5/31)

下(5/31-6/7)
2016.6/14に外部強制充電が必要になるまでに取得したデータをまとめました。
図1、図2は、それぞれ、2015.5/7-5/31、5/31-6/14の結果です。
上が発電機電圧、蓄電池電圧、下が発電機電流、蓄電池電流です。
この間、外部強制充電なしで38日間通しのデータがとれました。
今回もヒストグラムを作りました。
最大の充電電流は1.3A程度と前回より小さくなっています。
電流 (A) |
発電 |
充電 |
-0.1~0.0 |
267,557 |
304,237 |
0.0~0.1 |
43,147 |
9,711 |
0.1~0.2 |
5,888 |
4,130 |
0.2~0.3 |
2,832 |
2,147 |
0.3~0.4 |
1,550 |
1,197 |
0.4~0.5 |
874 |
753 |
0.5~0.6 |
537 |
479 |
0.6~0.7 |
330 |
318 |
0.7~0.8 |
179 |
169 |
0.8~0.9 |
138 |
88 |
0.9~1.0 |
65 |
45 |
1.0~1.1 |
67 |
25 |
1.1~1.2 |
35 |
15 |
1.2~1.3 |
24 |
6 |
1.3~1.4 |
20 |
2 |
1.4~1.5 |
16 |
0 |
1.5~1.6 |
15 |
0 |
1.6~1.7 |
12 |
0 |
1.7~1.8 |
9 |
0 |
1.8~1.9 |
8 |
0 |
1.9~2.0 |
1 |
0 |
2.0~2.1 |
7 |
0 |
2.1~2.2 |
4 |
0 |
2.2~2.3 |
3 |
0 |
2.3~2.4 |
1 |
0 |
2.4~2.5 |
1 |
0 |
2.5~2.6 |
0 |
0 |
2.6~2.7 |
0 |
0 |
2.7~2.8 |
1 |
0 |
2.8~2.9 |
0 |
0 |
2.9~3.0 |
1 |
0 |
バッテリーのみ接続した場合との長期比較

バッテリーに風力発電機+チャージコントローラ(CC)を接続した場合と
接続しない場合で長期比較をしました。
左のグラフが、結果です。
12.07Vになるまでの日数を比較すると、
風力発電機+チャージコントローラ(CC)あり2015/3/14が、43.2日
風力発電機+チャージコントローラ(CC)あり2015/5/18が、35.8日
バッテリーのみ2015/6/15が、62.2日
です。
バッテリーのみの結果からバッテリーの自己消費電流(制御回路込)を算出すると、
62.2日で30Ah放電したと仮定して20.1mA、
62.2日で21Ah放電したと仮定して14.1mAです。
接続した容量は54Ahで、古いのでへたっていると仮定し、
満重電から12.07Vまでで取り出せる電流量70%程度と推定し、
上記仮定(30/21Ah)としました。
ちなみにバッテリーから多機能バッテリーパワーコンボの
制御回路を切り離すことはできません。
この推定自己消費電流から、風力発電機+チャージコントローラ(CC)ありの場合の、
バッテリー、チャージコントローラ、風力発電機の収支を算出すると、下の表になります。
前提:放電電流量:21Ah
期間 |
バッテリー収支 ( Ah ) |
チャージコントローラ収支 ( Ah ) |
風力発電機収支 ( Ah ) |
2015/3/24 |
-14.6 |
-31.1 |
24.7 |
2015/5/28 |
-12.1 |
-25.8 |
16.9 |
前提:放電電流量:30Ah
期間 |
バッテリー収支 ( Ah ) |
チャージコントローラ収支 ( Ah ) |
風力発電機収支 ( Ah ) |
2015/3/24 |
-20.9 |
-31.1 |
22.0 |
2015/5/28 |
-17.3 |
-25.8 |
13.1 |
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