1.実験計画
過充電防止回路のご紹介
で紹介させていただきました、
独立電源システム向け第1世代過充電防止回路に関し、
プリント配線板を試作して、
そのプリン配線板で以下の様な独立電源システムを構築する予定です。
使用する機器は、以下の通りです。
機器名 |
種類 |
モデル |
仕様 |
太陽電池 |
単結晶 |
NT-84L5H |
定格電流 5A |
電流計 |
アナログ電流計 |
- |
最大目盛3A |
ダイオード(2並列) |
ショットキーバリア |
- |
(1つで)40V3A |
過充電防止回路 |
- |
ocp-7L4T |
- |
蓄電池 |
多機能鉛蓄電池 |
パワーコンボ PG-421SP |
21Ah |
蓄電池 |
鉛蓄電池 |
12DD-33 |
33Ah |
この独立電源システムは、通常は太陽電池により常に満充電状態にしておきます。
満充電になると過充電防止回路が働き、満充電を知らせる7つのLEDが点灯し、
太陽電池と蓄電池が切り離されます。
太陽電池の定格電流は約5Aです。
一方蓄電池の容量は、補助蓄電池も含めて54Ahです。
通常鉛蓄電池の自己放電は、1日当たり0.1%程度です。
これは54mAhに相当します。
したがって、晴天で垂直に太陽電池に太陽光が入射する理想的な場合に換算して、
0.01時間、つまり36秒間太陽光にあたっていれば常に蓄電池が満充電状態に維持できることになります。
太陽電池を設置している場所は、南東を向いたベランダの奥まった場所です。
そのため、冬季は昼間に太陽光が入射すのですが、
夏季は朝しか太陽光が入射しません。
災害・停電時は、以下の様に、多機能鉛蓄電池、補助鉛蓄電池を負荷に接続して使います。
災害時に避難する場合は、多機能鉛蓄電池を補助鉛蓄電池と切断して持っていきます。
尚、多機能鉛蓄電池には100V ACインバーターを搭載していますので、
100V AC機器を使用することができます。
また、1W LED、USB充電機能も搭載しています。
尚、災害時・停電時以外も蓄電池に蓄えられた電力を使用することは考えていません。
その理由は、蓄電コストが高いためです。
2つの蓄電池の値段は、合計で40,000円しました。
鉛蓄電池は、通常500回充放電できます。
1回の充放電あたりの減価償却費は80円です。
容量は、合計で54Ah(648Wh)です。
1KWhあたりでは、124円です。
電力料金は、1KWhあたり25円です。
これでは、独立電源システムによる電力は、電力会社から購入する電力に比べて、
5倍高いという計算になってしまいます。
そのため、当方では、災害・停電時のみ蓄電池に蓄えられた電力を使用することにしました。
この独立電源システムでは、蓄電池は常に満充電状態で保管されるため、
鉛蓄電池の寿命にとっては非常に有利です。
実証実験では、以下を確認します。
1.満充電を検出し、LEDで表示できているか
2.常に満充電状態を維持できているか
3.補助鉛蓄電池と共に負荷で使用した時に何時間電力を使用できるか。
(アイドル時消費電力20Wのノートパソコンを
画面とハードディスクのアイドル時電源オフ機能、
スタンバイ機能、休止機能をオフして使用したいと思います。)
4.補助鉛蓄電池を切り離して負荷で使用した時に何時間電力を使用できるか。
(同様にノートパソコンを使用します。)
5. 3と4の後に、満充電になるまでに何日かかるか。
2.チューニングと基本特性の評価
プリント配線板への実装
基板試作業者から納品されたプリント配線板は2層品で、以下のものです。
そのプリント配線板に部品を実装した試作4号機は、以下のようになりました。
実装した基板の基本的な特性
部品のパラメータを載せた回路図は、以下の通りです。
この回路で、直流電源を用いて、過充判定電圧電流依存性を測定しました。
その実験回路は、以下の通りです。
電流は、直流電源の出力の読みを、電圧は、電圧計モードのハンディマルチメータ読み用いました。
結果は、以下の通りです。
独立電源システムの実験
このプリント基板を用いて独立電源システムを構築しました。
接続図は、実験計画の項目に載せてあります。
実験の様子を、以下に載せます。
実際に接続して実験をしてみると、過充電判定電圧が低いことがわかりました。
バッテリー電圧12.7Vでも過充電と判定されてしまいました。
実験開始時に過充電判定電圧は13.5V程度でしたが、
再び直流電源で過充電判定電圧を測定すると、12.6Vになっていました。
外気にさらされたからか、過充電判定電圧が下がってしまっています。
そこで、1つ接続されていた赤色発光ダイオードを青色発光ダイオードの変え、
2,2MΩの抵抗を470kΩに変えました。
部品のパラメータを載せた試作5号機の回路図は、以下のように変わりました。
その結果、過充電判定電圧は再び13.5Vになりました。
非切断時消費電流は5倍程度になっている可能性がありますが。
このプリント基板で再び独立電源システムを動かしてみました。
2012.12/23(日)9:30にバッテリー電圧13.5V、正常に充電していて、充電電流は1.0A。
同10:00にバッテリー電圧12.8V、7つのLEDが点灯しており充電防止機能作動。
正常に過充電防止機能が作動していることがわかりました。
2012.12/24(月祝)8:30 充電電流0.2A、バッテリー電圧12.8V、充電中。
9:00 充電電流0.2A、バッテリー電圧13.0V、充電中。
9:30 充電電流0.2A、バッテリー電圧13.1V、充電中。
10:00 バッテリー電圧12.9V、過充電防止機能作動。
13:00に再び発電していました。
洗濯物のシーツを干して日陰になって、風でシーツがめくれて再び発電していた様です。
そうだとしたら正常動作です。
満充電になってもいったん日陰になってから日が当たると発電するのは、正常動作。
19:00 本日は12.8Vで終了。
2012.12/25(火)12.45Vで終了。
本日のバッテリー電圧は12.45V。
満充電は12.6Vなので、満充電されていないです。
今のところの原因分析は、晴天で充電電流が最初から多かったため、判定電圧が下がったためと考えています。
微小電流と5Aで0.375V判定電圧が変わります。
2月頃、LEDを温度依存性が負であるとわかっているものに交換し、470kオームの抵抗を2.2MΩ+1.0MΩの合計3.2MΩに変えました。
部品のパラメータを載せた試作6号機の回路図は、以下のようになりました。
過充電判定電圧は、15℃で14.5~15.0Vほどになりました。
この回路で、直流電源を用いて、過充判定電圧を測定しました。
結果は、以下の通りです。
そして、過充電判定電圧の温度依存性を取得しました。
試作6号機は、約-35mV/℃の負の温度依存性を持ちます。
過充電判定電圧は、-30mV/℃の温度依存性を持つのがよいとされます。
LEDの負の温度依存性を用いて、負の過充電判定電圧の温度依存性を実現しました。
また、試作6号機の消費電流は、2.0uAでした。
(室温:19.4℃、バッテリー側電圧:14.81V、電流:1.46A)
4月頃ですが、一方、パワーコンポの側の使い方にも問題があることがわかりました。
電圧計を常時オンにしていたので、消費電流が結構大きくなってしまっていました。
そこで、電圧計は、人間が電圧を確認するときだけオンにし、普段はオフにするようにしました。
冬は日中日が差すのですが、春になると朝は光が十分さすのですが、午前中にしか光がささなくなりました。
7時頃起きると、いつも、既に0.3A程度発電・充電しています。
晴天の場合、8時頃に満充電になることが多いです。
2013/4/21(日)は、曇天でしたが、8時頃に0.5A程度充電していて、8:15には満充電になっていました。
夜20:00頃、バッテリーの電圧を確認すると、12.8Vで、過充電防止回路がいかに低消費電流であるかということがわかります。
なかなか休日の朝の6時から9時まで起きていることができないので、この時間の連続した報告はできないのですが、
2013/4/22(月)は、朝6:30に充電電流0.2A、バッテリー電圧13.2V、
朝7:00に充電電流0.25A、バッテリー電圧13.35Vでした。
また、2か月以上この過充電防止回路を運用して全く問題は起きておらず、信頼性もまずまずと言えそうです。
2013/4/28(日)、朝6:30で充電電流0.15A、バッテリー電圧12.95V。 早朝で直射日光が当たっていなくても 発電していました。
7:00で充電電流0.20A、バッテリー電圧13.15V、
7:30で充電電流0.25A、バッテリー電圧13.25V、
8:00で充電電流0.30A、バッテリー電圧13.35V、
8:30で充電電流0.30A、バッテリー電圧13.45V、
9:00で過充電と判定、バッテリー電圧12.90V、
20:45でバッテリー電圧12.75V。
春になって、ベランダに太陽光が横からささず、上のほうからさしてくるようになったので、
太陽光が太陽電池に十分当たらず、
常に満充電の状態にしておく分には問題ないのですが、
バッテリーを空にすることがあるような使い方の場合、
バッテリーを傷める可能性があります。
そこで、ベランダの腰壁上に10Wの太陽電池を追加設置することにしました。
3.ノートパソコン駆動実験
ここで、過充電防止回路の機能を確認するという一番の目的からはそれるのですが、
満充電になったバッテリーでどれだけノートパソコンが駆動できるかという実験をしました。
2つの鉛蓄電池の合計容量は54Ah、ノートパソコンのアイドル時の消費電力は20Wくらいです。
ノートパソコンは、Lenovo G580(Core i3、メモリ8GB搭載)です。
USBでマウス、キーボード、メモリリーダを繋いだ状態で、
スタンバイ、HDDアイドル時停止、ディスプレイアイドル時停止はオフ、ディスプレイ照度は最高としました。
(最初に行ったノートパソコンへの放電実験は、33Ahの補助電源が接続されていなかった疑いがあるので、報告は削除しました。)
まず。33Ahの補助電源を接続せず、21Ahのパワーコンポのみでノートパソコンに給電する実験を行いました。
ワットチェッカー(電力計測装置)ははさみませんでした。
5/10 18:52、バッテリー電圧は無負荷で12.7V、放電開始し12.1V。
20:13現在バッテリー電圧12.1V。
23:06現在バッテリー電圧11.35V。
5/11 0:04現在バッテリー電圧11.1V、アラームが鳴って放電終了。
2:09 ノートパソコンの内蔵バッテリーもなくなって休止状態へ移行。
パワーコンポのみから電力供給できた時間は5時間12分でした。
ノートパソコンの電源が入っていた時間は、7時間17分でした。
5/12から太陽光で再び充電をしたところ、5/13 18:00現在12.8Vとなり、2日で満充電になりました。
次に、2つの鉛蓄電池、33Ahの補助電源と21Ahのパワーコンポを接続して、ノートパソコンに給電する実験を行いました。
同じく、ワットチェッカーははさみませんでした。
2013/5/18 10:41 放電していない状態でバッテリー電圧12.85V、放電開始後12.45Vでした。
13:18に12.15V、17:29に11.9Vでした。
2013/5/19深夜の3:01にバッテリ電圧10.85V、アラームが鳴って2つの鉛蓄電池からの放電は終了しました。
無負荷状態で、バッテリー電圧は11.25Vでした。
その後、ノートパソコンの内蔵バッテリーでしばらくノートパソコンは駆動されていたのですが、
電源が入っていた時間を記録するシステムを立ち上げ忘れたため、
この部分のみ後で別に行いました。
10:01 内蔵バッテリーを利用してノートパソコン駆動開始。
12:12 ノートパソコンの内蔵バッテリーが少なくなり、休止状態へ移行。
結局、2つの鉛蓄電池による駆動で、16時間20分、ノートパソコンの内蔵バッテリーを含めて、18時間31分駆動することができました。
停電、災害時には、18時間半ノートパソコンを駆動することができることがわかりました。
実際には、ディスプレイの明るさはもう少し暗くするので、
これ以上の時間駆動できるものと考えられます。
翌日2013/5/20 10:01、空になった2つの鉛蓄電池に太陽光電による充電を開始し、バッテリー電圧11.4V充電電流0.7Aでした。
5/20 18:40に、バッテリー電圧11.6Vでした。
曇天や雨天だったのでほとんどバッテリー電圧は上がっていません。
バッテリーの劣化が心配です。
5/21 18:06 バッテリー電圧は12.1Vまで回復しました。
5/22 18:00で12.15V、5/23 18:00で12.25V、5/24 18:00で12.3Vでした。
5/25 8:36にバッテリー電圧12.7V,、充電電流0.4Aでした。
その後は、5/26 20:00で12.5V、5/27 18:00で12.8Vでした。
5/27に無事に満充電になりました。
満充電になるのに8日間かかりました。
4.電圧データロガーによる電圧変動のモニタ
電圧データロガーVR-71を用いて、独立電源システムのバッテリー電圧をモニタしてみました。
10分に1回電圧が記録されるように設定しました。
記録できるメモリは8000回分あります。
この設定では、1か月半ほど電圧データを記録できます。
定期的にパソコンとRS-232Cケーブルでつないで、データを吸い上げて運用します。
ちなみに最近のPCではRS-232Cが無いので、USBに変換するケーブルを用います。
1か月分の記録結果は、以下の通りです。
1日の中の変動を重ねたものが、以下のようになりました。
特定の日を抽出して見てみますと、2013/8/26は以下の通りです。
この日は晴天だったのか、朝電圧が14.5V付近まで上昇し、過充電判定電圧に達し、その後バッテリー電圧が下がっています。
2013/8/25は以下の通りです。
この日は曇天だったのか、朝昼はそれほど電圧が上がらず、
夕方電圧が14.5V付近まで上昇し、過充電判定電圧に達し、その後バッテリー電圧が下がっています。
2013/8/23は以下の通りです。
この日は曇天だったのか、朝昼夕とはそれほど電圧が上がらず、夜を迎えています。
過充電判定電圧に達する時の電圧変動は急激で、10分に1回の記録では、ピークを捉えられないようです。
しかし、記録間隔を短くすると、頻繁にPCにデータを吸い上げる必要があり、手間なので、
普段は10分に1回の記録で運用しようと思います。
2013/10/27に取り込んだデータの追加です。
どうしても保存時の電圧変動は避けられないようです。
独立電源システムと過充電防止回路のChariot Lab.のページ-トップに戻る